農産物の販売に活かすマーケティング力

 

農業界に新しいマーケティングを導入しよう[NO.3]
〜事業革新は「T」・「C」・「P」から〜

 事業の目的は「絶えざる顧客の創造と維持であり、その結果自らが変革すること」だと、アメリカのマーケティング学者フィリップ・コトラーは言っています。前回「お客様ピラミッド」について述べましたが、これは、いかに多くのサポーターを獲得するか、ということが、事業の発展につながる物語っています。
 そこで今回は、これからの事業の発展の根幹にある「T・C・P」に触れてみたいと思います。マーケティング理論の原点に4P(商品・価格・売り場・販売促進)があることは第1回目で書きました。これからの事業を成功に導くためには、もう一歩進んで、この「T・C・P」を考える必要があります。

 それでは「T・C・P」について説明しましょう。
●Tはターゲット(的・標的)。すなわちお客様、顧客です。
●Cはコンセプト(概念・観念)。商品づくりの考え方、独創性、会社の理念など、事業経営に関する経営者の意志のことです。
●Pはポジショニング(位置づけ)。他者の生産物と比較してどこが違うのか、優位点は何か、差別化はされているか、といったことです。
 この「ターゲット」「コンセプト」「ポジショニング」のそれぞれの頭文字をとって、「T・C・P」と言います。

 まず「ターゲット」。前回書いたように、自分の「お客様」は誰か?ということが重要となります。顧客は、様々なルートから情報を得ています。インターネットの普及は、世界中の情報を分け隔てなく瞬時に手に入れることを可能にしました。顧客は、ともすれば、スーパーの専門店員より豊富で重要な情報を持っています。そして、自分なりの判断で商品を選ぶのです。
 この賢い顧客こそ、企業は重視する必要があります。顧客を味方にし、彼らとの対話を行なうことで、新しい企業像が見えて来るといっても良いでしょう。

 次に「コンセプト」です。顧客の目が肥えてきた今、生産物の「作り方」が注目されています。トレース・アビリティや農薬・肥料の使い方などの情報も、当たり前のように公開されるようになりました。また、そこで働く社員も、経営理念の無い企業には魅力を感じません。
 現代が企業のモラルや理念が問われている時代だということは、連日新聞を賑わしている記事を見れば明白でしょう。経営者の理念が社員を動かし、顧客を引き付けることにもなります。信念を持つ企業が発展し、そうでない企業は社会的責任を問われるのです。

 そして「ポジショニング」ですが、これは、自分たちの生産物が、競争相手とどこが違うの?ということです。まわりと同じ商品なら価格競争になってしまい、限りなくコストダウンを強いられます。その無限の価格競争から脱するには、「価値」競争に持ち込むしかありません。もちろん価格も価値の1つには違いありませんが、価格競争は疲弊と無力感しか残りません。「価値」競争は、商品の作り方、売り方、伝え方といった、価格とは別の価値を見つけることなのです。
 たとえば、無農薬・減農薬や土壌改良もそのひとつですし、地域の優位性をあげてもいいですね。ブランド、パッケージング、情報内容などいろいろな工夫が望まれます。

 以上のことを頭に入れたうえで、「T・C・P」を自社の企業、商品、生産物にあてはめて考えてみてはいかがでしょう。

 


 

林 辰男(はやしたつお)

(株)ジャパン・アグリ-カルチュア・マーケティング&マネジメント(通称jamm)取締役(マーケティング担当)。1966年(株)博報堂入社。企業・自治体のマーケティング、リサーチを担当、その後農業プロジェクトに参画。2000年同社を定年退職、自治体・農業団体の調査、農業関連のマーケティング、リサーチ、プランニングに携わる。

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