農産物の販売に活かすマーケティング力

 

農業界に新しいマーケティングを導入しよう[NO.4]
〜お客様中心のマーケティング〜

 前回、事業の目的は、顧客の獲得と維持、そして顧客との対話を通じて、自らの企業革新を行うことである、と述べました。さて、マーケティングの世界では、「顧客(お客様)中心」という言葉がよく使われています。それには次のような要因があります。

1 需要と供給のアンバランス
2 技術の平準化
3 少子高齢化
4 IT普及による情報革新
5 4Pの変化 特に販売チャネルの多様化
6 ビジネス界における世代交代

 では、それぞれについて詳しく述べていきましょう。

1 需要と供給のアンバランス
「モノ」(何かほしい)の供給が行き渡り、消費の傾向は、「コト」(何かしたい)へと次第に変わりました。商品の供給が一段落すると、供給サイドの川上、川下論から、生活者主導による需要サイドの選択が一段と明確になります。商品の一方的な供給から生活者の商品選択が始まったのです。

2 技術の平準化
生産技術の著しい上昇は、企業間の技術格差を小さくしました。QC(クオリティ・コントロール)、ZD(ゼロ・ディフェクト)、シックス・シグマなど、生産技術向上運動が日本製品の質を世界的に高めたことは否めません。商品間の差が小さくなると、企業は自からのコア・コンピタンスを明確にする必要があります。

3 少子高齢化
昨年の出生率が1.29と史上最低となり、減少傾向は止まりません。一方、高齢者の増加は、医療、介護、労働、年金、教育など様々な分野で。多大な影響を与えています。生産・消費においても他人事ではありません。需要の低下、供給量の減少などが、マーケティングに大きな影響を及ぼします。非婚、晩婚、単身世帯の増加などの人口構成の変化は、社会的インパクトを与えるのです。

4 IT普及による情報革新
インターネットの普及率は50%を超えています。パソコンのみならず、携帯電話の普及も一段とITを促進させています。ITの普及により、全世界から専門の最新情報が瞬時に手に入ることになりました。最新の商品、サービスを入手できるということは、個々人がプロになるということであり、そのネットワークを通してより高度の情報が得られるということです。そこには、コンシューマーではなくプロシューマーが出現しますので、企業はより専門化しなければなりません。

5 4Pの変化 特に販売チャネルの多様化
マーケティングのベーシック要素である4Pが変化してきています。商品格差が縮小し、消費者の関与、参加が見られるようになりました。価格についても、必ずしも企業側で決定することができなくなりました。また、販売活動においても、マスメディア偏重からインターネット広告やミニコミが重要視されるようになりました。その中でもっとも顕著なのが「売り場」ではないでしょうか。従来は専門店や大手の百貨店、スーパーが主な売り場でしたが、現在は直売所、通信販売、インターネット販売、オークションなど、売り場の多様化は時空を超えたといってもよいと思います。

6 ビジネス界における世代交代
55年体制の終焉とITの普及は、ビジネス界の世代交代を促進させています。戦後を支えてきた最後の世代である団塊の世代が、まもなくリタイアを迎えます。また、ITやベンチャー企業の出現は、旧世代の経営者交代を促しています。マイクロソフト、ヤフーなどのIT企業、インターネット証券、外資企業の進出、外人経営者の出現など、日本企業も変化せざるを得ないことは日常化しています。

 以上のような変化が、マーケティングにも大きなインパクトをもたらすことは、当然のことといえるでしょう。

 


 

林 辰男(はやしたつお)

(株)ジャパン・アグリ-カルチュア・マーケティング&マネジメント(通称jamm)取締役(マーケティング担当)。1966年(株)博報堂入社。企業・自治体のマーケティング、リサーチを担当、その後農業プロジェクトに参画。2000年同社を定年退職、自治体・農業団体の調査、農業関連のマーケティング、リサーチ、プランニングに携わる。

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