農産物の販売に活かすマーケティング力

 

農業界に新しいマーケティングを導入しよう[NO.6]
〜需要サイドの民主主義が変える21世紀ビジネス〜

 今回はちょっと趣向を変えて、プロ野球再編に関するさまざまな問題点を、今まで述べてきたマーケティングの視点から振り返ってみたいと思います。球団経営者、選手会、ファン、新規参入意向企業に分けて考えてみると、20世紀マーケティングと21世紀マーケティングの明らかな相違が見えてくるのではないでしょうか。
 21世紀のマーケティングが、20世紀のそれと大きく異なる点は「顧客中心」になったということです。この顧客中心社会の背景としては、

1 新しい時代のテーマ
「顧客の参加・経験」「顧客との関係づくり」「企業再結合」
2 新しいインフラとしてのデジタル・ネットワーク
「インターネットがつくる情報社会」「情報の透明性と開示」
3 供給過剰と需要低迷の常態化
「物的需要の一巡と需要の質的転換」「供給サイド主導の専制主義から需要サイド主導の民主主義へ」
3 供給過剰と需要低迷の常態化
「物的需要の一巡と需要の質的転換」「供給サイド主導の専制主義から需要サイド主導の民主主義へ」
4 人口減少社会と少子高齢化
「単身世帯の増加と女性の労働力」
5 ビジネス界における世代交代
「ITを駆使する新経営者の台頭と新ビジネス」「意思決定者の交代と顧客創造・維持」「垂直組織から水平組織へ」

などがあげられます。では、このような社会(時代)変化は、今回の合併再編騒動にいくつ当てはまるでしょうか、

1 顧客を巻き込む
 今回のストライキ実施の賛否をファンに問うたところ、圧倒的にストライキが支持されました。経営者サイドでは、はじめはストなどありえない、と木で鼻をくくったような態度でしたが、現実はスト実施によって、改めてファンが選手の味方であることを思い知らされました。
 経営者の思惑はまったく裏目に出ました。顧客を巻き込むことの重要性が認識されます。

2 球団経営の二重性(垂直組織と水平組織)
 今回交渉にあたった球団代表は、オーナーとは違います。オーナーの意図を忠実に守って、選手側と話し合うという宿命を持っていました。ここに、旧体質企業経営の縦社会組織が垣間見えます。
 一方選手会側は、即断即決できる布陣で臨みました、まさに一選手であり選手会の代表でもあるわけです。このような水平な組織は、スピードマーケティングには欠かせないのです。代表者が直接現場を把握することの大切さを意味します。

3 情報の透明性・開示性
 交渉の経過について、選手会会長の古田選手は、試合の有無にかかわらず交渉経過を各放送局夜のスポーツ番組で、逐一誠心誠意応えていました。一方球団側では、番組出演はおろか記者の質問に対しても「今は言えない」「わからない」の連続でした。
 記者会見でも、選手側が自分の言葉で話しているのに対して、球団側は用意されたコメントを棒読みするだけでした。さらには、球団側の二転三転するコメントも不信感を募らせました。情報は出来るだけ具体的に、そして自分の言葉で話したいものです。

4 旧体制の弊害と新ビジネスの台頭
 今回の騒動の発端は、長年赤字に苦しむパシフィック球団合併の促進と、1リーグ制への移行でした。そこには、球団を経営とみてコスト削減のみを企業再生とみる体質がにじみ出ていたように思います。企業の社会的責任や公的性格を無視した話ではないでしょうか。
 プロ野球は2リーグ体制になって、主に「新聞社」「鉄道」「映画制作」によって維持されてきましたが、映画が斜陽産業になり「流通」や「金融」が進出してきました。現代は「IT」産業が台頭していることは間違いありません、それを「そんな会社は知らない」と言い切る経営者はまさに時代遅れではないでしょうか。
 21世紀はITを駆使した起業家と新ビジネスが続々と登場してきます、ITを目の敵にしている、あるいは関心が無いと拒絶している経営者も少なくありません。ビジネス界は徐々に世代交代が進んでいます。ITは販売を目的としなくとも情報は世界中から瞬時に集まります。ぜひトライしてみたいものです。

5 「作り手」の情熱・志・想い
 今回もっとも感じられたのが、選手会側の野球に対する「情熱」と「志」「想い」でした。古田選手会長は昼は交渉、夜は実戦、夜中は番組出演と、まさに八面六臂の活躍でした。ファンの心を掴んだのも当然でしょう。
 これは、お客様の心を掴むことが、企業の維持発展に欠かせないことを証明しています。

 今回は、今までのシリーズで述べてきた新しいマーケティングの方向を、プロ野球再編問題になぞらえて書いてみました。ご意見がありましたら、ぜひお聞かせください。

 


 

林 辰男(はやしたつお)

(株)ジャパン・アグリ-カルチュア・マーケティング&マネジメント(通称jamm)取締役(マーケティング担当)。1966年(株)博報堂入社。企業・自治体のマーケティング、リサーチを担当、その後農業プロジェクトに参画。2000年同社を定年退職、自治体・農業団体の調査、農業関連のマーケティング、リサーチ、プランニングに携わる。

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